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緩和ケア("緩和ケア" とは何か?)

2008/05/15
〔改訂〕2016/07/19

「緩和ケア」を知っていますか?

近年、テレビや新聞などで「緩和ケア」が取り上げられる機会が増えてきました。典型的には、ホスピス・緩和ケア病棟で、末期がんの患者さんがモルヒネ等の医療用麻薬で痛みの治療を受けて、最期を痛みなく有意義に家族と一緒に過ごす場面を取材した番組などが放映されています。「緩和ケア」と聞いて、このような内容を思い浮かべる人が多いと思います。

治癒を目指してきた近代・現代医療の盲点 ~治らない病気にかかった場合は?~

1960年代にイギリスで創められたホスピスケアの概念が1980年初頭に日本に導入され、それ以降ホスピス緩和ケア病棟と呼ばれる施設が日本の各地に建てられるようになりました。

近代・現代の医学・医療の掲げる第一目標は、何よりも病因、治療法の解明とその臨床応用です。この目標は今後も変わらないでしょう。医学の発展により感染症など治る病気の数は格段に増えました。がんも早期であれば、手術などで治すことも可能となってきました。しかし、医学がどれほど進歩しても、人間は永遠に生き続けることは不可能ですし、"死"の苦しみからは誰も逃れられない、という厳然たる事実が一方ではあります。昔は、がんの診断は通常本人には伝えられず、そのため直前まで死を意識して過ごす場面も現在ほど多くなかったと思います。現代では、がんなどの難病であっても、患者さん本人が病気について詳しく知りたい、という傾向が強くなりました。病気について詳しく理解した上で医療者側と協力してより良い治療に自ら参加するかたちとなりました。

がんなどの難病の告知を受けた人は、病気自体は治らないにしても、残された貴重な時間を有意義に過ごしたいと願うものです。そこで様々な病気において、病状が進んだ状態の療養中に生命(生活)の質(QOL:クオリティー オブ ライフ)をどうしたら改善もしくは維持できるのか、という問題が出てきます。治癒を目標とするこれまでの医学は、この問題に答えることはできず、「緩和医療・緩和ケア」という新しい分野が登場しました。

「緩和医療・緩和ケア」は、がんなどの進行性難治性疾患に対して、治癒という目標が得られない状況にあっても、万人の願いである"苦痛の緩和"を目指す医療であり、そのための専門的知識や技術向上を目指す一分野であるとされています。

緩和ケアとホスピスは何が違うのでしょうか?

日本では、「ホスピス」は"がん"の末期医療を行う施設のことを指します。「緩和ケア」はもっと広い概念で、治癒が難しい進行性の疾患で病期によらず苦痛の緩和を目指す医療やケアのことを指します。

ホスピスは終末期のみを扱いますが、緩和ケアでは終末期患者のみならず、もっと状態のよい進行期の患者さまも対象となります。ただ実際には、この緩和ケアの概念はまだ十分普及しておらず、日本でも終末期のがんが緩和ケアの対象者の殆どを占めてきた経緯があります。しかしながら、最近5年くらいの間に、“早期からの緩和ケア”の重要性が強調されるようになり、抗がん治療と同時併行で提供される緩和ケアも、当院では珍しくなくなってきました。今後は、がん治療期から緩和ケアが同時に提供されることがもっと当たり前になる時代となります。

最善を期待し病気が改善することを期待するけれども、最悪にも備えるという2段構えで患者(家族)と医療者の双方が進行がんと向き合うことが重要です。不本意ながら病状が進行したとしても、本人が望ましいと考える最期が迎えられるサポートを実践していくことが私たちの仕事です。

緩和ケア概念における最近の変化について

これまでご紹介してきたホスピス・緩和ケアのイメージと全く異なる緩和ケアが最近5~10年の間に様々な方面から強調されるようになってきました。そのことについて簡単にご紹介しましょう。

1つ目は「早期からの緩和ケア」です。進行がんの患者さんに対して、抗がん治療等の積極的がん治療を行っている時期、すなわち、まだお元気な時期から緩和ケアを開始した方が、患者さんやご家族のQOL(生活の質)が高まることが、様々な研究で知られるようになってきました。実際に私たち緩和ケア科(チーム)が抗がん治療中の頃から、あるいはがんと診断された時点から患者さんやご家族に関わり始めるケースは、以前に比べて増加傾向にあります。ここで、注意すべきことは、「緩和ケアはすべての医療者によって提供される」という点です。通常範囲のケースですと、がん治療医や現場の看護師らによって痛みやつらさに対する治療やケア(1次緩和ケア)が行われます。通常の治療チームのみで対応が難しい場合は専門的緩和ケア(2次緩和ケア)が必要となり、私どもがサポートを担当することになります。

2つ目は「在宅における緩和ケア」です。最近、日本人を対象としたアンケートでは、がんの末期になったら自宅で最期を過ごしたいと答えた人が半数以上でした。ところが、実際に自宅で看取られているのは、がんで亡くなる人全体の1割にも満たないのが現実であり、約8割のがん患者さんが病院で亡くなっています。がん患者さんが家で最期を迎えたいのに、その希望を支えることができていない現状に関して、そのバリアは何なのか、様々な側面から研究が行われています。また、医療制度面や現場の個々医療者が取り組める対応策など、現在取組みが進められています。

新しい変化の最後の3つ目は、「緩和ケアは死に至るすべての患者さんと家族を対象にする」という点です。2013年の第13回欧州緩和医療学会(EAPC)で、「緩和ケアは人権 (Palliative care as a human right)」というプラハ宣言が採択されたことは有名です。これまで日本では緩和ケアといえば悪性疾患(がん)のみを対象としてきましたが、今後は、悪性腫瘍で培ってきた緩和ケアアプローチを他の慢性疾患、臓器不全等にも応用することが重要となってきました。私たち緩和ケア科(チーム)は病院横断的に、死に至る病と闘っている患者さんとそのご家族の痛みと苦しみに寄り添い、サポートして参ります。そして、治療する医師や現場で患者さんやご家族に寄り添う看護師、リハビリスタッフ、その他の多職種チームのスタッフ(薬剤師、MSW、臨床心理士、栄養士、チャプレン、ボランティア)と協働して、全人的側面から、患者さんのよりよい最後の時間をお支えする手助けをして参ります。

どうしたら亀田で緩和ケアを受けられるのでしょう

当院には、緩和ケア科と緩和ケアチームがあり、入院中、外来通院中に緩和ケアを受けていただけます。進行がんやその他の進行性の疾患による痛みや様々な苦痛で苦しんでおられる患者さまが対象です。

現在、当院には緩和ケアの専門病床はありません。その代わりに院内のどの病室にご入院中であっても、担当医師が緩和ケア科(チーム)に依頼をした場合に、ご入院中の病室に伺い主治医チームと併診するコンサルト体制で緩和ケアを提供しています。ご本人やご家族が緩和ケアの対象かどうか不明な場合は、お気軽に担当医・看護師へご相談ください。外来通院の患者さまは、担当医からの依頼やご本人の希望があれば「がんサポート外来(C棟化学療法センター)」あるいは「疼痛・緩和ケア科外来(クリニック)」を受診していただけます。詳しくは外来受付スタッフにご相談ください。

疼痛・緩和ケア科 関根龍一

緩和ケア科のご案内

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