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“ 痛み”ってなに?~トータルペイン(全人的痛み)の考え方~

2008/07/01

緩和ケアと最も関係の深いものが“痛み”です。通常医学的には、痛みというと怪我や手術などの傷の痛み(誰にでも原因がすぐ理解できる、身体にあ る侵襲が加わった場合の痛み) を指すことが多いですが、一言で"痛み"といってもこの言葉には多面的、多層的な意味があります。患者さまから 「私のこの“痛み”は誰も分かってくれない」 という言葉を耳にしますが、これは“痛み”の複雑さ、他人の痛みを真に理解することがいかに難しいかを端的に表しています。

国際疼痛学会は、“痛み”を「組織の実質的あるいは潜在的な障害に関連する、またはこのような障害と関連した言語を用いて述べられる不快な感覚・情動体験である」(1986 年)と定義しています。

なんとも訳の分からない文章です。ここで注目すべきは、原因が誰の目にも明らかな痛みだけでなく、(原因が不明であっても)言語表出の中で不快な情動体験として示されるものはすべて"痛み"に含まれるということです。
あ る人が 「痛い!」 と訴えたら、医療者はその原因はともかくとして、その個人の情動体験としての"痛み"をそのまま受け止めることから、適切な痛みへの対処が始まることを しっかり認識すべきです。「おかしいな~、どうしてそんなに痛がっているの? そんなに痛くなるはずはないんだけどね~。本当にそんなに痛いの?」 などと医者や看護師に繰り返し言われて、大変つらい思いをしたという話を患者さまから直接聞くことがあります。このセリフは痛みをそのまま受け止め、かつ 真摯に理解すべき医療者としては失格で、厳しく反省しなくてはなりません。
医療者は痛みの原因を個々の事例の必要度に応じて、多面的、多層的に理 解することにより、痛みの治療とケアにあたります。その第1歩はトータルペイン(全人的痛み)を理解することから始まります。トータルペインの考え方につ いては、以前も触れましたがここで復習しましょう。

痛みには4つの側面、つまり1. 身体的、2. 心理的、3. 社会的、4. スピリチュアルな(霊的)的側面があります。

がんの痛みを含む難しい痛みに対する治療を効果的に行う場合には、特にトータルペインの考え方が何より重要です。この図で注目すべきは、上図のそ れぞれの側面が互いに関連しあい影響し合っているということです。ですから、表面的な訴えとしてこの図に書かれたすべての側面の苦痛がない場合にも、配分 は異なるにせよ個々の患者さまは様々な側面について痛み、苦痛、つらさを抱えており、その全体の表出として 「痛い」 と訴えていると理解するのです。そしてそれぞれの側面の問題点を明らかにしこの解決に向け、チーム医療で全力で取り組みます。同じ痛みでも不安や抑うつが 強ければ、痛みをより強く感じやすくなることが様々な研究で分かっています。そのため心理面のサポートと身体的な痛みの治療を同時に行うことで、痛みの改 善の相乗効果を目指すことが可能になります。

トータルペインの緩和を1人の医師や看護師が行うことは不可能で、チーム医療が必須です。亀田では、多職種メンバーから構成される緩和ケアチームがそれぞれの専門分野からトータルペインの緩和を目指してサポートしています。

緩和ケア科医師 関根龍一

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