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第11話 漢方薬は“調味料”?

2022/10/15

前回、漢方には「本治」と「標治」という2つの顔があるというお話をしました。本治では、漢方的な視点から見た患者さまの状態を変えていく「ツール(手段)」として、種々の漢方薬を使います。この場合の漢方薬は、言ってみれば素材を最高に美味しくするためにシェフが使う調味料のような存在です。

ときどき「この漢方はどういう効果の薬ですか?」と聞かれることがあります。標治では「これは〇〇の漢方薬です」と明確に答えやすいのですが、本治では答えに窮することが少なくありません。漢方的な診断は、陰陽虚実、六病位、気血水、五臓などの多様な評価軸が入り組んでおり、本治ではこれらを最適化する目的で漢方薬を使うわけですので、難解な解説にならざるを得ません。

また処方された漢方薬をネットで調べる患者さまは多いでしょうが、調べてみたら子供の夜泣きの薬だったとか、自分は男なのに女性向けと書いてあったとか、自分が治したい症状とぜんぜん違う病名が並んでいたなどなど、「あの先生間違って処方したんじゃ?」と疑心暗鬼になることもあるようです。本治ではそのような通常の薬の解説からすると理解できない処方が出ることがしばしばあります。一般的な漢方の適応症や効果は、現代医学のシステムに漢方を組み込むために便宜的に決められた標治的な効果や病名のみで、長い間に積み重ねられた経験知のほんの一面にすぎません。

漢方薬の作用というのは非常に多岐にわたり、幅広いものです。例えば「醤油ってなに?」と聞かれたらどう答えるでしょう?「刺し身や寿司につける黒っぽい液体調味料」というあたりが無難な答えですが、寿司だけでなく煮物や焼き魚にも欠かせないし、蕎麦や天ぷら、TKG(卵かけごはん)にも必要ですよね。時にはフランス料理の隠し味にも使われるそうで応用範囲は無限大です。漢方薬も本治ではそういう使われ方をするのです。

さて、漢方の真価である本治を受けるには、当科のような専門科を受診していただく必要がありますが、標治的な使い方でも十分に効く、便利な漢方薬がいくつもあります。

有名なところではこむら返りに著効する芍薬甘草湯。カタカナの名前で市販されていてテレビCMもよく見かけます。余談ですがあの製薬会社さんはいろいろな漢方薬をキャッチーな名前で販売していて、なかなか商売上手だなあと感心しています。

漢方薬は標治的な使い方ではしばしば即効性で、世間で言われている長く飲まないと効かないというのは正しくないのですが、なかでもこの芍薬甘草湯は医師も驚いてしまうほどの即効性で、飲むと数分で良くなるといいます。頻繁にこむら返りを起こす方は、起こりやすい時間帯の前に内服しておくと良いようです。多くは寝ているとき、特に明け方に起きるのではないでしょうか?その場合は寝る前に飲んでおくというわけです。ただ、たくさん取りすぎると浮腫んだり血圧が上がる副作用が出る方がいらっしゃるので、毎日飲むなら寝る前に1回程度にしたほうが安全です。

一方、お子さんに多いウィルス性の嘔吐下痢や、天気が悪くなる前にいつも頭が痛くなる、というような方は五苓散という薬を試してみるといいですね。これもカタカナ名でドラッグストアでも売られています。成分に桂皮(シナモン)が含まれているのでシナモンアレルギーのある方は要注意ですが、あまり副作用の心配がない漢方薬で、二日酔いにも実によく効きます(だからといってお酒を飲みすぎるのは禁物ですが)。

漢方的な考え方では水毒という、水の代謝を改善する薬で本治でもしばしば活躍します。

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東洋医学診療科 部長 南澤 潔

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