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第9話 漢方診療の実際

2022/9/15

実際の漢方の診療というのは、どのようなものでしょう?「白髪の老人が手をかざして得体のしれない呪文を唱える」的なことを思っておられる方もいらっしゃるようで…(*^^*)

しかし、実際はいたって普通の診察です。通常、病院に行くと症状や経過を詳しく聞かれる「問診」や「身体診察」、採血や画像などの「検査」を経て診断、治療方針の決定に至ります。漢方でも基本的には同じです。とはいっても科学的な検査のない時代に確立した診療法ですから、診察は医療者の五感;視覚・聴覚・嗅覚・触覚(味覚はさすがに使いません)を最大限活かして行います。

漢方の診察は「四診」といって「望・聞・問・切」という4つの診察方があります。望診・聞診は外見や声音などを、視覚聴覚嗅覚をフル動員して観察します。四診のなかでも一番重要と言われていて、望診・聞診でピンとくるような処方は、多くの場合よく効くものです。もちろんただの「外見」だけではなく、診察室に入ってくるときの足の運び、視線の動きから始まり、姿勢、手足の動きや声の張り、呼吸、喋り方などから多くの大切な情報が得られます。

「見た目で判断する」などというと非科学的で不安になるかもしれませんが、実は現代医学でも優秀な医師は「なんかおかしい」といった感覚を大事にしているものです。そう感じる理由をはっきり説明するのは難しくても、患者さまの体に起こっている重大な異変を、些細な兆候の組み合わせから鋭敏に感じ取っているのですね。これはなにも医師に限ったことではありません。

救急などで「小児患者の親御さんが“なにかいつもと違う”と訴える場合には、診察や検査で異常がなくても慎重に対応するように」と昔教わりました。常日頃つぶさに我が子を観察している親ならではの鋭い洞察力が、まだ検査に出ないような初期の段階での異変を嗅ぎ取っていることが時々あるからです。

問診は現代医学と同じく具体的な症状や経過に加え、漢方ではさらに普段の様子や前後の体調について根掘り葉掘り詳しくお聞きします。食欲、便通、睡眠や月経の不調などまで事細かく問診票や直接お話を伺って掘り下げていきます。「頭痛を治して欲しくて来たのに、便秘や生理がどういう関係があるのか?」と不審がられることもありますが、漢方は頭痛の治療でも、だるさの治療でも、めまいの治療でも、とにかく心身含め全身の状態を総体的に把握しないと正しい診療が行えないのです。したがって初診の患者さまは非常に時間がかかるため、完全予約制で、通常30分以上の診察時間に加え、問診票の記入にさらに予約の30分前に来院していただいています。

当科にはありとあらゆる症状や悩み事を抱えた患者さまがいらっしゃいます。どの科に行ったら良いかわからない、またはかつていろいろな科を受診してみたけど専門外だと断られてしまって諦めている、というような症状でも、漢方では良い解決策があることもあります。逆に「こんなのすぐ治るでしょう?」というようなことにすごく苦労することもあるのですが…。

東洋医学診療科では漢方に限らず、時には現代医学の治療も併用したり、専門科へ紹介して並行して治療していくこともあります。「こんなこと病院で話しても仕方ない」と思われているようなお話が、漢方では重要な意味を持つこともあります。特に初診時は気になることなどはできるだけ全部お話しください。

残念ながらお一人お一人からすべてのお話をじっくり伺う時間は取れないことも多いので、気になっていることをあらかじめメモなどにまとめてきていただけると、効率よく対応できます。

東洋医学診療科のご案内

東洋医学診療科 部長 南澤 潔

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