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第5話 現代医学の飛躍的な進歩と漢方の衰退と復興

2022/7/15

分析し調べていくことで原因がはっきりした病気、例えば細菌やウイルスの感染、腫瘍(できもの)による不調、また脳卒中や心筋梗塞の予防につながる高血圧や糖尿病の治療などに対し、現代医学は素晴らしい効果を発揮します。そのおかげで今われわれの寿命はこれだけ延びました。現在、日本人の平均寿命は女性87歳、男性も81歳を超えました。日本人女性の4 割は90歳を超えて長生きされるそうです。

織田信長が桶狭間の戦いの前に「人間わずか五十年…」と舞った話は有名ですが、実は日本人の平均寿命が50歳を超えたのは割と最近、戦後のことです。その頃生まれた方は、人生50年と思って生きてきたら、実際50歳になってみて30年も寿命が伸びているのですから、ここ70~80年の間の医学の進歩のめざましさがわかります。

ところで19世紀後半の明治維新の際に、明治新政府は当時蘭方と呼ばれた西洋医学のみを医療制度として認定し、江戸時代まで日本の医療の中心であった漢方医学を切り捨てました。明治の医制では漢方医学は医療とは認められなくなったのです。その後漢方は大きく衰退し、一部の心ある医療者によって細々と伝えられるに過ぎませんでした。

これについて、「とんでもなく間違った決定だった!」という漢方医は多いのですが、私はこれは慧眼(けいがん)で妥当な判断だったと思います。

当時の蘭方は、病気の原因となる微生物の存在を次々と明らかにしたり、解剖学や外科治療の進歩など、まさに文明開化の時代にふさわしい新しい医学に見えたのでしょう。「人体の構造を知ろうともしない漢方など、時計の図面も持たずに外からやみくもに油を差しているようなものだ」と揶揄(やゆ)されたと言います。当時の医学進歩の勢いがあれば、すぐに人間の構造もすっかり理解できて「詳細な図面」が手に入るようになると考えられていたのでしょう。

実際には2003年にヒトの遺伝子はすべて解読されましたが、それがどのように働いているのかについてはまだほとんど分かっておらず、人体の構造はまだまだ未知の世界です。科学が発展してきて逆に、ヒトのすべてを理解するにはまだまだ我々は無力だということが分かってきました。だからこそ今、人の心身を俯瞰(ふかん)的に捉える視点として漢方が再び必要になっているのですね。

明治時代に切り捨てられたのも、平成令和になって復興してきているのも、ともに時代の必然なのだと思います。

ちなみに…当初の外科手術は麻酔無しでした!! なんと恐ろしい…。1846 年にエーテル麻酔が初めて成功しますが、実はそのはるか前1804年に通仙散(麻沸散)というチョウセンアサガオに今でも使われる数種類の漢方生薬を配合した経口麻酔薬を使って外科手術を成功させていたのが日本の華岡青洲です。

  • チョウセンアサガオ

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東洋医学診療科 部長 南澤 潔

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