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薬剤耐性菌について

2017/9/1

皆さんこんにちは。感染症科の矢野と申します。

皆さんは「薬剤耐性菌」という言葉を聞いた事がありますか?今回は、最近よくニュースで耳にする「薬剤耐性菌」の話と、皆さんでもすぐにできる対応法についてお話ししたいと思います。

薬剤耐性菌って?

抗菌薬(抗生物質)が効かない菌のことです。私たちは普段、肺炎などの細菌感染症の患者さまに対して、原因となる菌に合わせた抗菌薬を使用して治療しています。しかし薬剤耐性菌が原因の場合は、通常用いる抗菌薬が効かないことがあります。全ての抗菌薬が効かない場合は治療方法がなくなってしまうのです。これは世界的な問題であり、2016年には伊勢志摩サミットでも議題として取り上げられ、日本でも国が薬剤耐性(AMR: antimicrobial resistance)対策アクションプランを作って対策を進めています。

薬剤耐性菌はどうして生まれるの?

薬剤耐性菌は抗菌薬を使うことで生まれます。菌を殺すための抗菌薬を使うことで、なぜ抗菌薬が効かない菌が現れるのでしょうか。

おおざっぱに説明しますと、細菌も生き物なので、生活環境が悪くなると生き延びるために環境に合わせて自分を変化させます。抗菌薬で自らの生存が脅かされる時には、抗菌薬に耐えられるように自らの性質を変えたもの(耐性菌)が一定の割合で出現します。抗菌薬を使えば使うほど、その数も増えることになり、私たちの前に現れるのです。

耐性菌を生まないために私たちができることは?

私たち医療従事者ができることは、患者さまに抗菌薬が本当に必要かどうかをよく吟味して、不要な場合は使わないことです。また、必要な場合はその患者さまに感染症を起こしている菌だけを狙い、他の菌には影響を与えない抗菌薬を無駄なく選ぶこと(これを抗菌薬の適正使用と言います)です。

私たち感染症科は病院内では血液から菌が検出された患者さまをはじめとして、他の診療科からご相談をいただいた患者さまを一緒に診察させていただき、抗菌薬の適正使用に取り組んでいます。院外では、感染症に関する勉強会や、学会などの活動を通して、抗菌薬の適正使用に関する情報を発信しています。

次に、皆さん(患者さま)がすぐにできることをお話しします。

まず、抗菌薬に対するイメージを変えて欲しいと思っています。時々、「熱が出たら抗生物質」と思われている方がいらっしゃいます。抗菌薬は魔法の薬ではありません。熱がでる病気でも、抗菌薬が必要なものと不要なものがあります(表)。必要ではない状況で使われてしまうと、耐性菌を生み出したり、かえって体によくない副作用も起きてしまうことがあります。

抗菌薬が不要な感染症の代表格は「風邪」や「ウイルス性腸炎」です。抗菌薬(抗生物質)は細菌による感染症しか治せず、ウイルスによる病気を抗菌薬で治すことはできません。皆さんがもし発熱や風邪で医療機関を受診された時は、主治医に抗菌薬を求めるのではなく、どのようにすれば症状がよくなるかを相談してください。

病気(疾患) 一般的な原因 抗菌薬?
ウイルス 細菌
かぜ/鼻水 不要
気管支炎/せき・たん(元々元気な成人/こども) 不要
百日咳
インフルエンザ 不要
溶連菌咽頭炎
咽頭炎(溶連菌以外) 不要
滲出性中耳炎 不要
尿路感染症

(出典 https://antibioticawarenessjp.jimdo.com/資料集/)

もう一つ、皆さんができることは「手指衛生」です。耐性菌は人間の手を介して広がることもあります。亀田総合病院には泡状のアルコール製剤が各所においてあります。病室、診察室、検査室から出る時などはこのアルコール製剤を使って「手指衛生」につとめてください。

以上、簡単ですが耐性菌のお話しをさせていただきました。このコラムを読んでいただいた皆さんが、明日から抗菌薬の適正使用にご協力くだされば幸いです。

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亀田総合病院 感染症科 矢野勇大