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高次脳機能障害の方の自動車運転

2011/11/15

今回は高次脳機能障害の方の自動車運転再開についてのお話です。高次脳機能障害を持った方の中には若い方も多く、運転の必要性が高い地域のため、多くの方が自動車運転の再開を希望されます。しかし、高次脳機能障害が運転に影響を及ぼすこともあるため、再開にあたっては様々な評価を行ったうえで、慎重に検討する必要性があります。

【高次脳機能障害と運転】

自動車運転には高度な脳の働きが必要です。正確にハンドル操作を行いながら、ちょうどいい力加減でアクセルを踏み込む。道路の状況を十分に把握しながらブレーキやウィンカー操作を行う。飛び出してくる自転車や車に瞬時に気付き、とっさに適切な操作を行う。これらの動作は、脳が多くの情報を「同時に」「すばやく」処理しなくてはいけません。

身体の麻痺がなく、日常生活では問題なく過ごしている高次脳機能障害の方でも、運転となると、より高度な能力が必要とされるため、問題が生じることがあります。例えば、反応が遅れることでブレーキ操作が遅れる、注意障害により左から来る車に気づけない、一時停止の看板を見落とす、気づくとスピードが出すぎているなどです。
加えて、自分自身の障がいについて気付きにくいということも高次脳機能障害の一つの症状です。これにより、自分では「大丈夫」「病気の前と変わらず出来ている」と思い、十分な危機感のないまま運転を行ってしまうこともあります。

【当院での取り組み】

高次脳機能障害の方の運転再開にあたり、リハビリでは細かく丁寧な評価を行ったうえで助言を行うようにしています。高度な脳の働きが求められる運転では、小さな欠点でも大きな事故に繋がる可能性があるからです。以下に評価の簡単な流れをご紹介します。

  1. 1 .まず注意力や集中力、記憶力や判断力、反応速度などに低下がないかを検査します。これは、机の上で行うテストの様なものや、パソコンで反応時間を測るなどの課題を行い評価していきます。
  2. 2 .次に院内にある自動車シミュレーターを使い、仮想の市街地コースを運転してもらいます。ここでは、飛び出してくる子どもに気付いてブレーキが踏めるか、「様々な危険を予測して回避が出来るか」 「実際にブレーキを踏むまでに時間がかかっていないか」などの評価を行い、必要があれば練習を行います。
  3. 3 .最終的には鴨川教習所にて実際に車に乗り、場内・路上を運転してもらいます。ここでは運転のプロである教官と、高次脳機能障害について知識のあるリハビリスタッフが同乗し、それぞれの視点から評価を行います。
    上記のような取り組みを通して、患者さまやご家族へ、どんな点で危険性があるのか、どんな工夫や注意が必要か等を具体的にお伝えしていきます。

【運転再開にあたって】

運転を再開するかどうかは、最終的にはご本人やご家族の自己判断に委ねられています。しかし、高次脳機能障害は目に見えない障害であるがゆえに、ご本人やご家族が対応や判断に迷うことが多いかと思います。だからといって「なんとなく」運転を再開してみるのでは危険です。

様々な検査で細かく評価し、実際の運転動作についても十分に確認するという取り組みは、時間もかかり一見面倒に思えるかもしれません。しかし、事故が許されない運転については慎重な判断が必要です。ご本人やご家族が『何に気をつけて運転しなければいけないのかを分かって運転すること』や『必要があれば運転を控えるという決断が出来ること』を目的に、高次脳機能障害の方を支える一つの支援として当院では自動車運転評価の取り組みを続けていきます。

亀田クリニックリハビリテーション室 言語聴覚士 木伏 結

亀田クリニックリハビリテーション室

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