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どうして高次脳機能障害は起こるのか

2011/06/15

前回は高次脳機能障害が「見えにくい障がい」であり、家族や周囲の人たちの理解と支援を必要としている事をお話ししました。

今回は、本障害の成り立ちについてお話します。少し専門的で難しくなりますがお許しください。

高次脳機能障害になるのは、脳卒中や頭部外傷、脳炎、低酸素脳症など、「脳組織にダメージを与える」病気や事故などが原因で、後遺症として麻痺や言語障害などと一緒に、または単独で起こります。

麻痺などは分かりやすい症状ですが、失語症(上手く言葉を話したり、理解したりできない)や失認(見える物や、自分の体の一部を実感を持って認識できない)、失行(麻痺も無いのに自分が意図した行動が上手くできない。例えばライターの使い方は知っているのに上手く点火できず極端な不器用に見える)などはちょっとわかりにくいでしょう。

では、「見えにくい障がい」をどのようにして診断するのでしょう。実際に患者さまを診断する時には「病歴」と「画像診断」と「神経心理学的検査」などを組み合わせて、総合的に評価して診断を行います。

病歴とは、脳に障がいを負う事になった原因の病気やけがに関する情報です。画像診断はコンピュータを使い、脳のどの部分が、どの程度の傷をおっているかを確認します。最後の検査は記憶や注意力などを種々の知能テストのような課題を与えて、回答や間違え方の特徴などから医師が障がいを診断します。

原因となる疾患は脳卒中や頭部外傷(脳のけが)が代表的で、このような場合には脳のCTやMRIなどの画像診断で障がいを受けた脳組織が確認される事が多いのです。

失語症と呼ばれる言語障害や手足を動かす事が出来なくなる麻痺などの症状が目立つのが脳卒中の特徴で、亀田リハビリテーション病院でもその他に長期間入院して集中的な治療を受けられる患者さまが大勢おられます。この様な場合には画像診断でも障がいと一致する特徴的な所見が得られて、予後(どの位の期間でどこまで治るかという見込み)の推測も付けやすく、治療効果の判定も比較的容易です。

ところが脳全体に小さい病巣が広範にちらばっている脳炎や二酸化炭素中毒などによる低酸素脳症でも本障害が起こる事が知られており、頭部外傷後遺症の一部も画像診断でははっきりとした所見を指摘する事が難しい事が珍しくないのです。つまり、この面でも「見えにくい」障がいと考えられます。

神経心理学的検査という言葉は初めて聞くという方が多いと思いますが、要するにいわゆる知能テストのようなものから、記憶力や計画を立てて筋道だった行動が出来るかを検査するものなど、非常に種類が多く、ここに全てをご紹介する事ができません。

しかし、多くの検査を組み合わせることで個々の患者さまの障がいの特徴やリハビリの効果などが「見えて」くるので非常に重要なのです。

殆どの患者さまは、大脳の中でも前頭葉と呼ばれる部分の損傷が本障害を引き起こしていると考えられています。その特徴は記憶障害(特に新しいことを覚えられない)・注意障害(すぐに気が散って、考えられないような間違いや見落としをする)・遂行機能障害(作業をする時に計画が立てられず、いちいち指示を貰わないと動けない)・社会的行動障害(自発的な行動ができなかったり、周囲に協調するのが困難だったり、引きこもったり)などが挙げられています。

つまり、脳卒中や交通事故などで脳の損傷を受け、一見して悪いところがないように(麻痺などが治って)見える患者さまでも、この様な症状があって、検査で障がいが確認されると高次脳機能障害と診断されるのです。

現在の医療技術では画像診断的に病巣が証明困難な事が多いのですが、病歴と神経学的な所見が診断に導けば、次回からお話しする「高次脳機能障害支援事業」を利用していただく事ができます。

千葉県高次脳機能障害支援事業代表 亀田リハビリテーション病院長 井合茂夫

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