ページの先頭です

出産後の便失禁

2019/2/1

はじめに

便失禁とは、便のコントロールが上手くいかず、自分の意思に反して肛門から便がもれる状態です。海外での報告では出産から6ヶ月間で4人に1人以上の人がガスや便のもれの経験があると言っています。今回は分娩を契機に生じた便失禁について述べていきます。

どんな原因で起こるのか

出産後から肛門のみならず膣周囲、尿道周囲の触った感じや、便意や尿意がわかりづらいと感じる人が多いと思います。出産は短時間で胎児の大きな頭や体が骨盤内の臓器や周囲筋肉を押し広げて通過していくため、少なからず骨盤内組織に打撲のようなダメージを与えます。そのため、一時的に便意や尿意、肛門をしめる感覚が鈍くなることがあります。多くの方では出産後1ヶ月を経過する間に肛門周囲の感覚は戻ってくるはずです。

出産後1ヶ月経過しても症状が改善しない場合は次にあげる2つの可能性があります。

1つ目は肛門をしめる筋肉である肛門括約筋の損傷です。通常は出産直後に産婦人科医により切れた筋肉の縫合がなされます、しかしながら修復が不十分な場合には便失禁が生じることがあります。

2つ目は、肛門を支配する陰部神経のダメージです。この神経は骨盤内の仙骨という部分から肛門近くまで伸びている神経であり、分娩時間が長いと神経が引き伸ばされてダメージが生じ、便失禁が起こることがあると言われています。

どのタイミングでどんな病院へ行ったら良いのか?

出産後から1ヶ月経過しても便失禁の症状があるようなら産科医師や助産師さんへ相談すると良いでしょう。

具体的な治療はなにか?

治療は手術を行わない「内科的治療」と手術を行う「外科的治療」に分けられます。肛門管超音波検査で肛門括約筋が切れていない、もしくは損傷が十分に手術で修復されている場合にはまずは内科的治療を開始します。

内科的治療の内容については第3話「便失禁の治療」の項目新しいウィンドウで表示しますを参照してください。

外科的治療は現時点では2つあります。切れた肛門括約筋を縫い合わせる肛門括約筋修復術(図)と排便に作用する神経を刺激することで便失禁を改善させる仙骨神経刺激療法です。

肛門括約筋修復術の適応は、出産時切れた肛門括約筋が十分に修復されておらず損傷の程度が大きい場合です。肛門括約筋修復術は手術によって見た目を出産前のように改善することが望めますが、手術後長期間が経過すると肛門の収縮能力が低下するとの報告があります。もう一方の仙骨神経刺激療法は手術後長期間経過しても肛門機能を保つと報告されていますが、磁気を使った検査を受けることができない、電池の交換が必要などのデメリットもあります。どちらの手術を選択するのかは、主治医とよく相談してください。

自身でできることはあるのか?

出産から1ヶ月間の肛門周囲の感覚が戻らない時期には無理に肛門をしめる体操をすることは必要ありません。まずはダメージを受けた肛門周囲や骨盤底組織の負担を減らして回復するのを待ちます。具体的には便が硬くならないように(形はあるが軟らかいが最適)する、トイレの時間を短くする、重いものを持たない、長時間の立ちっぱなしを避けることです。

直腸肛門外来のご案内

亀田総合病院 消化器外科部長 高橋知子