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「事前指示書」

2016/5/1

アドバンス・ケア・プランニング=将来の意思決定能力の低下に備えて、患者さまやそのご家族とケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合うプロセス(過程)。もしバナ≒もしものための話し合い。

この連載もおかげさまで折り返し地点を迎えました。このような「縁起でもない話」に快く紙面を割いてくださる広報室の皆様や、読者の皆様に心より感謝しています。


実は先日、この連載を読まれたある読者の方から、「実際に(意思を)書き記しておくもの」についてのお問い合わせをいただきました。ということで、今回からは事前指示書とそれに関連するツールについて、いくつかご紹介していきたいと思います。

「事前指示書」

亀田総合病院では、入院・外来患者さまに対して、「医療処置に関する事前指示書(コード確認書)」を作成・運用しています。

主な指示項目は以下の3項目となっています。

(1)心肺停止の場合に、心肺蘇生を実施する / 実施しない、の選択

(2)心肺停止の状態でない場合に

  • 苦痛緩和を最優先とする医療処置を行う
    (例:経口的な水分・栄養補給、疼痛や苦痛軽減のための薬の使用、体位交換、処置、清拭など)
  • 侵襲性(体・心へのダメージ)の低い医療処置を行う
    (例:上記に加えて、治療目的の投薬、非侵襲的陽圧換気療法など)
  • 侵襲的治療も含む医療処置を行う
    (例:気管に管を入れて人工呼吸器につなぐ、除細動など)

のどれかを選択

(3)人工経管栄養を、行わない / 一定期間試みる / 行う、の選択

この3項目に加えて、「中心静脈カテーテル」や「輸血」、「透析」、「経鼻胃管」、「胃ろう」についての希望があれば、それも記載します。
最後に本人による署名の欄がありますが、本人が署名できない場合には、代理判断者が署名を行います。



いかがでしょうか。「これなら簡単に書ける」、そう思った方は多くはいないと思います。この事前指示書の中には、多くの一般の皆様にとって馴染みのない単語がたくさん出てきます。しかし、これらはどれも人生の最終段階の医療を考える上では重要な要素です。

それゆえ、この指示書の作成にあたっては、これらの医療処置の内容を理解するとともに、これらを行う場合と行わない場合に予想される結果についても十分に理解する必要があります。仮にその理解が十分でないままこの指示書を作成してしまったとしましょう。その場合、せっかく書いたこの指示書は、肝心な時に、あなたの意思に反する方向に働いてしまうかもしれません。そのため当院では、この事前指示書は患者さまとご家族、主治医の3者が一緒に話し合いながら作成することを原則としています。

海外の研究では、「単に事前指示書を作成するだけでは、患者・家族の満足度は変わらない」という報告があります。ただ書くだけでは不十分なのです。当院の書式を見てもお分かりの通り、これが適用される場面は非常に限られています。やみくもにこの指示書を作成するよりも、まずはご自分の人生観・価値観が現在の治療に反映されているかどうかを主治医やご家族と一緒に話し合う方が先決かもしれません。また、話し合う際には、「なぜ先生・家族はその治療を私に勧めるのか」、「なぜ私はその治療を選ぶのか」、この「なぜ?」をキーワードに話をしていくのがお勧めです。それによって、あなた自身の思いや、主治医・ご家族の思いが明らかになり、結果として「納得感」が高まることが期待されます。

次回は、もう少し幅の広い“もしも”に備えるためのツールを紹介したいと思います。

【参考資料】
(※1)亀井隆太、千葉大学法学論集、2015
(※2)足立智孝、鶴若麻理、生命倫理、2015
疼痛・緩和ケア科のご案内

亀田総合病院 Advance Care Planning in AWA プロジェクト代表 蔵本浩一

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