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「ピンピンコロリ」を考える

2016/4/1

アドバンス・ケア・プランニング=将来の意思決定能力の低下に備えて、患者さまやそのご家族とケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合うプロセス(過程)。もしバナ≒もしものための話し合い。

もしバナのすすめも第4回目となりました。今回は「ピンピンコロリ」にまつわる話について考えてみたいと思います。


そもそも「ピンピンコロリ」とは「病気に苦しむことなく、元気に長生きし、病まずにコロリと死のうという意味の標語」(Wikipedia)です。この言葉は、1979年に長野県体育学会における発表論文に登場したのがその由来とされています。

大辞林第3版の解説には「健やかに長寿を全うすること」、またはそれを目的にした「高齢者に向けて健康増進や体力づくりなどを啓発する運動」も含まれると記されています。


「PPK」とも略されるこの言葉には、なんとなく「ポップ」というか「ポジティブ」なイメージがあります。だから口にしやすいのかもしれません。

そして実際に「ピンピンコロリ」を望む人もとても多い印象があります。私の周りでも「最期はピンピンコロリで(逝きたい)」という人は医療者・非医療者を問わず、少なくありません。また巷には「ピンピンコロリ」の反対で「ネンネンコロリ(=NNK)」という言葉があり、一部にはこれらを比較して「ピンピンコロリを目指そう!」的な運動まであるようです。


「ピンピンコロリ」は日本人にとって本当に理想の最期なのでしょうか。第一生命経済研究所が2003年に全国の男女792名(40歳~79歳)に行った調査では、「どんな最期が理想だと思うか?」の質問に対して、最も多かった答えは「心筋梗塞などである日突然死ぬ」(64.6%)でした。日本人のぽっくり願望、すなわち「ピンピンコロリ」を望む人が多いことがわかる結果です。(実は2010年にも同じ調査が行われており、この「ぽっくり」を望む人の割合は75.9%とさらに増えているようです。)[図表参照]

もう一つ気になるのは、なぜその答えを選んだのか、その理由です。この調査では「ぽっくり」が理想と答えた人の85.9%が「家族に迷惑をかけたくないか ら」を理由として挙げています。次いで「苦しみたくないから」(62.3%)、「寝たきりなら生きていても仕方ないから」(54.3%)が続きます。この 統計について、聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生はご自身のブログの中で「核家族化やライフスタイルの変化で、家族のきずなや地域社会とのつながり が薄れているといった社会状態の変化が、こんな統計をもたらせたものと思う」と述べています。(※2)

また大阪大学大学院人間科学研究科教授の佐藤眞一氏は「そういう人たち(いわゆるネンネンコロリ)になりたくないという潜在的な否定意識が、ピンピンコロリには感じられる」と述べて、ピンピンコロリに疑問を投げかけています。(※3)

「ネンネンコロリ」も悪くない?

先の調査において、2番目に多かった答えは「病気などで多少寝込んでもいいから、少しずつ死に向かっていく」(31.7%)でした。「多少」というところがポイントになる気もしますが、「ネンネンコロリ」がちょうどこれにあたると思われます。確かに割合としては「ピンピンコロリ」の方が多いものの、「ネンネンコロリ」を望む人も少なからずいるということがわかります。この答えを選んだ理由として最も多かったのは「死ぬ心積もりをしたい」(67.9%)でした。

イラストレーターのみうらじゅん氏はご自身のコラムで、ピンコロ=突然死を以下のように述べています。(※4)

  • 確かに、突然死んじゃうわけだから、家族に介護などの迷惑をかけることはない。
  • でも、突然死ですよ!
  • 2日でも3日でも危篤なり危ない状況が続けば、親類縁者も病床に集まるワケじゃない?そこで、最後のお別れ的な時間が作れるし、死に水をとってあげたりすることもできる。
  • ところがピンコロじゃそれもできない!
  • 「死ぬ前に、もう一度会いたかった!」そんな知り合いが、ピンコロでは必ず一人は出てくるのではないか?


実際に実現するかどうかはさておき、統計上多くの日本人が理想とする「ピンピンコロリ」、皆さんはどう思われますか。

【参考文献】
(※1)第一生命経済研究所「死に対する意識と死の恐れ」2004年5月
(※2)YOMIURI ONLINE「日野原重明の100歳からの人生」2010年12月29日
(※3)東洋経済ONLINE「ピンピンコロリは長寿社会のためならず」2012年2月
(※4)NEWS ポストセブン「ピンピンコロリの嘘を暴く」2013年3月30日
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亀田総合病院 Advance Care Planning in AWA プロジェクト代表 蔵本浩一