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危険予知の感性を高める医療安全教育

2008/01/15

KYT(KikenYochiTraining:危険予知訓練)は、業務を行う作業者が事故や災害を未然に防止するために、作業場や作業工程に潜む危険を先取りし、対策を講ずる目的で行うものです。日本では、1973年に住友金属工業和歌山鉄工所が、危険を自らそうであるとキャッチできる仕組み作りとして、いち早く着手したことが知られています。KYTはここ数年で医療安全教育の一環に取り入れられ、当院では看護部・薬剤部・リハビリテーション・臨床検査部門などで職員研修はじめ、安全な環境を築くために利用しています。

例えば右の写真は『今日、内科に初めて入院した患者さまが車椅子に移ろうとしている』場面です。「どんな危険が潜んでいるか(危険のポイント)」「私たちはこうする(危険対策)」などと背景を展開していき、個人・チームの安全行動を積み上げていきます。このようにKYTは危険性を感じ取る感性を養い、安全性を高める教材の一つとして役立っています。

1. KYTシート

今日、内科に入院した患者さまが車椅子に移ろうとしています。

2. どこが危険か

  • 動くオーバーテーブル(不安定な物)につかまっているため、動いてしまい転ぶ。
  • 車椅子にブレーキがかかっているか確認していないため、車椅子が動き転ぶ。
  • 車椅子の足置き場に足をかけているので転ぶ。
  • 靴のかかとを踏んでいるので脱げてしまい転んだり、走行中に車椅子にひっかかる。
  • 症状によっては体のバランスをくずし、ふらついて転ぶ。

3. 危険対策

  • 安全な車椅子の乗り方を説明する。
  • 安定したところにつかまる。
  • ブレーキがかかっている。
  • 足置き場をあげる。
  • 靴をきちんと履く。
  • 介助者も上記項目の安全確認を行い、声をかける。



話は変わりますが、現在、「マリと子犬の物語」の映画が放映中です。これは新潟県中越地震の実話をもとに作られたものです。これを見た方々は忘れかけていた多くの感動を覚えたことでしょう。犬と人間の情、子を思う親の愛、家族・兄弟のきずな、さらには災害後の復興に向けて困難と悲しみを乗り越える人の力強さ、命の大切さも伝えてくれました。
避難所で村に嵐が近づいていることを知った兄弟が、マリと子犬たちを助けるために大人には内緒で村に向かう場面があります。大人に見つかれば「危ないからダメだ」と叱られ当然引き戻されてしまいます。大人たちは知識や経験から、起きうる危険性を予測できます。そして兄妹は、一心に村を目指しましたが嵐と道無き道にはばまれ、途中で断念してしまいます。もちろんストーリーの展開は円満に運ぶわけですが…。

兄妹が助かった背景には様々な「~たら、~れば」が存在します。避難所で同級生に呼び止められなかったら(情報提供者)とか、お父さんが女の子の靴下を見つけていなかったら(子どもの足跡)とか…。
医療には前もって予測できないこともあります。例えば他の医療機関での造影剤や薬剤アレルギー歴は、患者さまから自己申請していただくことで同剤使用によるショックを防ぐことができます。職員等の専門知識と患者さまから得た知恵や経験を合体させて危険予知ができたらいいなと願います。

医療安全管理室 セーフティマネージャー 髙橋静子