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転倒予防のために患者さまと一緒にできること

2008/03/15

病院の廊下は段差がなく明るい、それに看護師がいつも見てくれているから転ぶことはないと思われるでしょう。でも健常な人でさえ病院の廊下でつまずき、体勢を崩して転びそうになる事があります。

昨年末にホンダの「走るASIMO」が公開されましたが、ちょうど10年前、科学ジャーナリストの生野一氏の記事に、次の内容がありました。

【「歩く」ことがいかに複雑な行為か、コンピュータを使って解析している東京大学大学院総合文化研究科助手の多賀厳太郎さんの研究室を訪ねたときのことです。歩行は高度な運動でありロボットがぎこちない理由は、足の大腿骨や脛骨、腓骨などの周囲にある、さまざまな筋肉が一体どのような神経系によってどう制御されて、あの「歩行」という動きが可能なのか、人類はいまだにはっきり分かっていないからである。】
(引用:月刊「健康づくり 1998年 8月 特集」)

歩くことはとても自然で、歩行のメカニズムが実は非常に複雑であるということ、完全に二足歩行ができる人間の機能のすばらしさに改めて感動しました。

例えば、ベッドに横になっているところから、急に起き上がって歩くとします。このとき少しふらっとした経験はありませんか? 座った位置から急に立ち上がったときの立ちくらみ。これは起立性低血圧で、自律神経の一時的な失調で血流が低下したことによる影響です。まして、内臓疾患による自律神経障害、自律神経障害による血圧や心臓の機能への影響のほか、バランスが崩れる要因はたくさんあります。さらに足の筋力や歩行能力は加齢に伴って低下していくため、高齢者は非常に転びやすい状況にあるといえます。

そこで、入院中の転倒予防のために患者さまと一緒にできることをまとめてみました。

1. 入院のとき、過去一年以内の転倒経験を教えてください。

アメリカ老年学会のガイドラインによると、一度転んだことのある高齢者が再び転ぶ確率は、転んだことのない者が転ぶ確率の3倍になると報告されています。当院でも療養上の生活において38.8%に(2007年7月~2008年2月までの報告より)転倒既往があったと報告されています。

2. 足腰の弱り、筋力低下、ふらつきがある場合は職員を呼び介助を任せましょう。

  • 報告では7割近くが病室で転倒しています。ベッドから起き上がったあとは、ベッドの端に座って足をぶらぶらさせてから歩くようにしましょう。
  • 転倒は朝方の4時~5時に多く発生しています。まだ眠い状態、しかも消灯中は廊下の照明も薄明かりですから見えにくい状態にあります。職員が忙しそうだからと遠慮したり、一人で歩いてみようと試してみた途端に転倒ということがよくあります。遠慮せずにナースコールを押しましょう。

3. 催眠、精神安定剤については担当医師、看護師、薬剤師と相談しましょう。

4. 履物とパジャマの裾は体に合っていますか?

スリッパは履きやすい反面、脱げやすいので転倒の原因になります。踵のあるシューズタイプを選択しましょう。また、パジャマの裾が長い、腰のゴムがゆるい場合は調節をしましょう。

5. 自分でやろう、と慌てず、履物は面倒がらずに。

トイレ行為に伴う動作では、急ぐあまり履物を履きながら歩いている人の姿を時々見かけます。転倒予防のため、履物は面倒がらずにきちんと履いてから歩くようにしましょう。

「転倒の多くは、転倒者の自発的な行為中に起こる日常的な出来事」といわれますが、患者さま方が安心し、ゆとりをもって入院生活を送ることができるよう私たち職員は見守りたいと考えています。

医療安全管理室 セーフティマネージャー 髙橋静子