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医療サービスの生産性と働き方改革 (亀田総合病院長 亀田信介) 2019/05/01

亀田総合病院長
亀田 信介

安倍政権の下、「働き方改革」が推進されていますが、医療業界、特に救急医療や臨床研修を担う病院では、現実と制度のギャップがあまりにも大きく、医療崩壊を招きかねない問題となっています。

そもそも日本の医療サービスは、これまで医療提供者、特に若手医師の自己犠牲を前提として成り立ってきました。しかし最近多くの医療機関に突然労働基準監督署の調査が入り、長時間労働や、残業代問題などが指摘され、大混乱に陥っています。そこで厚生労働省は「医師の働き方改革に関する検討会」を立ち上げ検討を続け、地域医療を支える特定の医療機関の医師と、集中的に技能向上が必要な研修医など若手医師の残業時間上限について、年間1、860時間とする案を提示しました。当然長時間すぎるとの批判が出ており、今後医師の長時間労働を是正するための対策が強く求められています。

しかし一方で、労働時間の上限をどのように定めようと、本当に必要な医療サービスを規制することは、倫理的にも無理なことです。従って、現実的には医療サービスの生産性向上のための抜本的改革を進めることこそが、現在最も優先されるべきでしょう。

近年サービス業でも製造業と同様の生産管理システムが使われるようになってきました。いわゆるクリニカルパスの活用などもその一例です。質の管理と生産性の向上にある程度の効果は期待できますが、抜本的な改革のためには、根本に立ち返り、医師や看護師をはじめ、様々なコメディカル、更には事務員における作業の洗い出しと、より合理的なタスクシフトが求められます。そのためには、法改正を含めた権限の見直し、それに伴う資格制度や教育プログラムを構築し、その上ですべてのステークホルダーと合意を取りながら医療提供システムの基本的な企画、設計を根本的に作り直してゆく必要があるのではないでしょうか。

今後30年近く高齢者人口は増加しますが、生産人口は激減するため経済成長に期待することはできません。当然医療を含めた社会保障財源は破綻するでしょう。国家レベルの取り組みとしては、抜本的行政改革や、インバウンドの強化、移民政策などが挙げられますが、私たち医療人が国民のため、国家のため、そして自分たちのためにすぐに始められることは、これまでの固定概念や合理性のない利権や権限を見直し、質の高い医療を、効率的に提供するためのシステムを開発することではないでしょうか?

医療における「働き方改革」は、行政としても、医療費問題と労働問題の間で自己矛盾を抱え、解決困難な問題かもしれません。しかし、だからこそ医療制度の抜本改革を行う千載一遇のチャンスと言えるかもしれません。今後、様々な学際領域と連携し、未来に向けた企画、設計を行い、亀田メディカルセンターをフィールドとした実証実験から、具体的な成果を世の中に発信してゆきたいと考えています。

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